ある年の年末、岐阜県にある加子母の森の森林組合長さんに、正月飾り用の檜と杉を分けてもらいたいとお願いの電話をしていた時のことでした。
正月飾りなので、もし可能だったら松も数本でいいので分けてもらえないかと話したところ、「加子母の森には、松はあんまりないんだよな」とおっしゃったので「では、檜と杉だけで大丈夫です」と伝えました。
すると「いやいや、うちの分も松を迎えに行くから、数本だったら大丈夫だよ」というお返事。
「松を迎えに行く」ってどういうこと? と一瞬気になったけれど、忙しい年末、その疑問をとっさに封印して、早々に電話を切りました。でも、その疑問は、その後どんどん大きくなっていきました。

どうしても気になったので、年明けに調べてみたところ、こんなことがわかりました。
その昔、年神さまは、山の松に降りてきてくださると言われていました。その年神さまを家に迎えるために、山の松を切ってくることを「山に松を迎えに行く」というのだそうです。
山に暮らす人々にとって、植物は、食料や燃料などさまざまな必需品の材料となるだけでなく、時には薬として、時には厄除けや神様という存在として、暮らしになくてはならないものでした。
年明けの清々しい空気の中に、神さまが宿る緑の居場所。毎年、加子母の森から植物のエネルギーをお届けしています。
Comments